2022/08/20
みなさん、こんにちは。東京都9区(練馬区)選出の衆議院議員、立憲民主党の山岸一生です。
目次
昨日のブログでご報告した日韓トンネルは、私、山岸一生が衆議院内閣委員会の視察団の一員として長崎県を訪れる公式日程に先立って、私費でいわゆる「先乗り」をして、対馬島内を回って、独自の調査・取材をしたものでした。
本日ご報告するのは、衆議院内閣委員会の視察団の一員として長崎県対馬を訪れたものです。
8月16日・火曜日から8月19日・金曜日にかけて行われた衆議院内閣委員会の視察団の長崎県訪問の最大の目的の一つが、「重要土地規制」の現地視察でした。
重要土地規制とは、自衛隊施設や米軍基地の周辺など、「安全保障上重要な土地の周辺で、土地の利用や取引を国が調査・監視する」という制度です。
重要土地規制について定めた正式な法律は、「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(2021年法律第84号)と言います。
長い法律名ですので、以下では略称である「重要土地規制法」と呼びます。
少し長いですが、難しい条文では無いので、重要土地規制法第1条を引用します。
「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」
(目的)
第1条 この法律は、重要施設の周辺の区域内及び国境離島等の区域内にある土地等が重要施設又は国境離島等の機能を阻害する行為の用に供されることを防止するため、基本方針の策定、注視区域及び特別注視区域の指定、注視区域内にある土地等の利用状況の調査、当該土地等の利用の規制、特別注視区域内にある土地等に係る契約の届出等の措置について定め、もって国民生活の基盤の維持並びに我が国の領海等の保全及び安全保障に寄与することを目的とする。
対象地域の指定、調査、監視などの実務は内閣府が仕切ることになっているため、重要土地規制法は、私
の所属する内閣委員会が所管しています。
実は、重要土地規制法が制定れる過程で、大きく取り上げられたのが長崎県対馬でした。
長崎県の沖合に位置する対馬は、韓国からわずか50キロ。
2010年代、「一番近い外国」として韓国人に大人気になりました。
やがて島内に韓国系の会社が宿泊施設を建てるようになり、風光明媚な海岸にある対馬の海上自衛隊基地の周辺でも、開業が相次ぎました。
これらの動きに対して、「自衛隊基地の周辺がどんどん外資に買収されて、基地が包囲されている。安全保障上の脅威だ」といった論調で、自民党がさかんに取り上げるようになり、重要土地規制の議論が加速したのです。
そして昨年、2021年、重要土地規制法が成立しました。
今回の衆議院内閣委員会の視察団の訪問は、重要土地規制法に基づく土地規制が来月、2022年9月から全面スタートするのを前に、現場がどうなっているのか確認するのが狙いでした。
結論から申し上げます。
「重要土地規制」の実態は、国会や報道で見聞きしていたのとは、ずいぶん違いました。
私たち衆議院内閣委員会の視察団が訪れたのは、海上自衛隊の対馬防備隊本部です。
基地の司令官の方からは、周囲に韓国資本の宿泊施設が複数あるとの説明がありました。
ただ、司令官は与党議員からの質問に、具体的な自衛隊の任務への妨害行為は「なかった」と言明されていました。
その後、司令官の案内で、基地の周辺の韓国資本の宿泊施設の周囲を見学しました。
小ぢんまりとした民宿や、ゲストハウスのような建物がいくつかあるばかり。
さらに、コロナ禍もあり営業はしていない様子でした。
観光客がいたころを想像しても、「自衛隊基地が韓国資本のホテルに包囲されて、防衛活動が脅威にさらされている」という論調とは、だいぶ温度差があります。
過不足なく表現するならば、「対馬では、自衛隊基地の周辺も含めて、韓国人向けの宿泊施設が数多く点在している」という説明が妥当なところだと思います。
もちろん、基地で働く自衛官の方にとって、「近所で外国人観光客がお酒を飲んだりバーベキューをしたりして騒いでいる」というのは、気分が良いか悪いかと聞かれれば、「うれしい」ということはないだろうと思います。
ただ、それがただちに大文字の「安全保障上の脅威!」かと言うと、ずいぶんニュアンスが違います。
これは党派を超えて与党の議員も同感だったようで、ある自民党議員が「『自衛隊が取り囲まれている』っていうほどの圧迫感はないな…」とつぶやいていたのが印象的でした。
重要土地規制の象徴のように取り上げられてきた対馬の施設ですが、「実態とずれた認識のもとに議論が進められてきた」というのが、長崎県対馬を訪れた私、山岸一生の受け止めです。
なぜそうなったのか。
あえて今さら深堀りはしませんが、政府・与党にとって、「国境離島の自衛隊が外資に脅かされている」という“ストーリー”は、法案を推し進めるうえでプラスに作用したことは事実です。
さらに推測を進めれば、実は「本当に監視したい対象」は別にあるのだけれど、対馬の例を挙げておけばそちらは説明せずに済む、という思惑すらあった可能性も否定はできません。
私、山岸一生は、重要土地規制そのものには一定の合理性を認めます。
対馬で目にしたのよりも、深刻なリスクのある地域もあるかもしれません。
ですが、「どこで」「何から」「何を」守るのか、そのために「どのような制度」が必要なのか、逆に「やってはい
けない」ことは何か。
「安全保障上の脅威」という決まり文句、マジックワードに踊らされることなく、冷静に丁寧に決めていかなければいけないと、改めて誓いました。
重要土地規制については違うポイントもありますが、ブログの記事が長くなり過ぎてわかりにくくなりますので、今日はこれで終えます。
次回は「違うポイント」について考えてみます。
立憲民主党の衆議院議員、東京9区選出の山岸一生でした。