2023/03/23
皆さんこんにちは、立憲民主党の衆議院議員、東京9区(東京都練馬区西部)選出の山岸一生です。
目次
皆さんご存知のとおり、岸田総理がウクライナを訪問しました。
外交上のプラスマイナスや、国会対応のあり方など様々な論点がありますが、私は岸田総理のウクライナ訪問の必要性は理解できますし、G20リーダーのインドを訪問した後、という「順番」も適切だったと考えます。
他方、今回の岸田総理のウクライナ訪問について、「ジャーナリスト出身の衆議院議員、国会議員」として考えたことがあります。
それは、今回の岸田総理のウクライナ訪問は本当に「電撃訪問」「極秘訪問」なのか、ということです。
言い換えると、「マスコミのコントロールには成功したが、安全保障・インテリジェンスとしては『丸裸』ではなかったのか」。
これについて、皆さんと考えたいと思います。
まず、岸田総理のウクライナ訪問の「報道」の経緯を整理します。
今回の岸田総理のウクライナ訪問は、NHKと日本テレビが先行し、インドからウクライナへの経由地となったポーランドでの映像を撮影していました。
NHKと日本テレビはほぼ同じ場所から撮影しており、これは「事前に知っていなければできないこと」です。
果たして岸田総理がポーランドを経由することは、「漏れた」のか、「漏らした」のか。
NHKと日本テレビの2社がどのようにこの情報を得たのか現時点で明らかではありませんが、「“独占映像”の撮影と引き換えに秘密保持を約束していた」という可能性は排除できません。
続報が待たれます。
一方で、大半の官邸記者クラブ所属社は、インドに同行記者がいたものの、現地で「まかれて」しまいました。
また、「極秘」訪問の実態はどうだったでしょうか。
ネット上の飛行経路公開サービス「フライトレーダー24」には、首相が乗ったとみられるチャーター機の履歴が、細かに出てしまっています。
(※実際に岸田首相がこのチャーター機に搭乗していたかどうかは、明らかにされていませんが、蓋然性は高いとみられます。)
このチャーター機は、3月19日に東京からインドのニューデリーに向かい、3月20日にニューデリーからポーランドに向かっています。
また、3月19日夜に政府専用機が羽田空港を離陸したことも誰でもネットで見ることができます。
また、政府専用機が羽田空港に着陸することもわかります。
これらはすべて「公開されている情報」です。
組織的に航空機を追跡する能力を持つ集団なら、「チャーター機が羽田から、日本の岸田総理が訪問中のインドに飛び、その翌日にポーランドに向かって飛んでいる」という特異な動きを、リアルタイムで把握することは十分、可能だったでしょう。
政府の情報管理は事実上「丸裸」だったと言われても仕方ありません。
ちなみに、岸田総理を乗せた可能性が高いチャーター機が飛行した黒海上空では、先週、米軍の無人機がロシア軍機と接触して墜落したと発表されています。
以上のことから、私、山岸一生は、今回の岸田総理のウクライナ訪問について、以下のように言えると考えます。
それぞれ、さらに深掘りして考えていきます。
政府の「対マスコミ」での情報コントロールについては、一般的に、総理はじめ政権の動きについて、“隠密行動”が無制限に広がることは民主主義の観点から望ましくありません。
「ウクライナは戦地」と言いますが、「戦地」の解釈はあいまいです。
例えば、韓国を含む朝鮮半島も、法的には「戦争の休戦状態が続いている」に過ぎません。
表現を変えれば、法的には「韓国は戦時中」とも言えます。
また、一部のメディアだけに「餌」として「極秘情報」を提供するようになると、そのメディアは政府を批判できなくなってしまいます。
「マスメディアにいた衆議院議員、国会議員」として、今回、「極秘情報」を独占報道したNHKと日本テレビの2社には、「岸田総理がポーランドを経由する情報は、『漏れた』のか、『漏らした』のか」大きな説明責任が伴うことを指摘します。
私、山岸一生の提言ですが、一つの方法として、「秘密保持をさせたうえで代表取材」という選択肢もあったと思います。
政府が脆弱な移動手段を採用したリスクについては、結果的に何事もなかったのは幸いでした。
岸田総理が何ごとも無く、無事に帰国したことを安堵します。
ですが、政府専用機を使うことを検討することはできなかったのでしょうか。
政府専用機は2機セットで動いています。
このうち1機をポーランドに向かわせ、もう1機をインドから随員を乗せて帰国させることもできたはずです。
私も新聞記者時代に搭乗したことがありますが、政府専用機は、航空自衛隊のまさに「精鋭」が運航しています。
岸田総理、政府は、政府専用機より外国のチャーター機のほうが信頼できるというのでしょうか。
私、山岸一生は、現時点での情報を見る限り、納得できません。
岸田総理がこうした手段を、どの程度検討して、今回の結果に至ったのか。
これについて説明が待たれます。
なお、「政府の検討」を情報公開すること自体に安全保障上のリスクがある場合には、国会審議を非公開にする「秘密会」で説明することもできます(日本国憲法第57条第1項但し書き)。
日本国憲法第57条第1項
両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
今回、岸田政権は、岸田総理のウクライナへの「電撃訪問」「秘密徹底」の政治的ショーアップを優先し、ある程度は成功しました。
ですが、そこにこだわった結果、本来優先すべきだった「岸田総理を始めとする人命の安全第一」「民主主義の根幹となる国民への説明」という点が、おろそかになっていた可能性はないでしょうか。
言い方を変えれば、岸田総理が、「危地に飛び込む強いリーダー」を演出しようとするあまり、本来必要のない危険を冒したり、過剰な秘密主義に走ったりした可能性が、あったのではないでしょうか。
果たして政府、内閣総理大臣の判断として、適切だったか。
国会でしっかり検証をしなければなりません。
また、「裏をかかれた」メディアの奮起も期待したいと思います。
なお、すでに議論が出ていますが、「マスメディアにいた衆議院議員、国会議員」として「秘密保持を約束した上での取材、報道」についても触れておきます。
なお、これひとつでも、「報道の自由」の根幹にかかわる、極めて大きな論点です。
私、山岸一生は、「誘拐事件における報道協定」が、一つのガイドラインになりうると考えています。
ご存知の方も多いと思いますが、「誘拐事件における報道協定」は、誘拐事件が発生した際、人質の安全のために、警察と報道機関が結ぶものです。
この報道協定が敷かれると、報道側、メディアは「解禁まで一切報じられない」が、警察側はメディアに「逐一すべて説明する」責任が伴います。
こうしたことも参考に、どのような場合なら、「政府の秘密保持」が許されるのか。
「なあなあ」ではなく、緊張関係のある政治報道をつくっていく上で、「秘密保持を約束した上での取材、報道」は意義のある議論だと思います。
とかく“閉鎖的”と批判される「官邸記者クラブ」にとっても、信頼される報道のあり方を考えるチャンスではないでしょうか。
今回の出来事をきっかけに、政府、行政権の秘密主義を「無制限」には許さず、民主主義の根幹となる「報道を通じた国民への説明責任の徹底」を求め、その上で、日本国政府、首脳が国際政治の最前線で行動できるようにする。
国会も議論を深めていく責任があります。
みなさんと取り組んでいきます。
衆議院議員(東京9区・東京都練馬区西部選出)、立憲民主党の山岸一生でした。