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電動キックボードについて

※「電動キックボード」は本来、商標名ですが、いわゆる「商標名の一般名詞化」が進んでいます。

例えば政府のウェブサイトでも一般名詞として使用されていることを鑑み、本件記事でも一般名詞として使用します。

 みなさん、こんにちは。

 立憲民主党の衆議院議員、衆議院東京都第9区(東京都練馬区西部)選出の山岸一生です。

目次

電動キックボードに関するルールが変わりました

 2023年7月1日から、電動キックボードなどに関する改正道路交通法が施行されました。

 これまで電動キックボードは、原付バイクや自動車と同じ扱いで、「運転免許」が必要でした。

 それが今回の道路交通法の改正により、一定の基準を満たす電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車」と定義され、16歳以上であれば、運転免許がなくても運転ができるようになりました。

 電動キックボードの新制度が解禁されて、すでにいくつかの事件・事故が報道されています。

 先日も、私、山岸一生の選挙区からも近く、私も頻繁に利用する池袋駅で事故があり、大けがを負った方と、けがをさせて逮捕された人が出る事故がありました。

 けがをされた方にお見舞いを申し上げます。

 道路交通法を所管するのは内閣府の外局である国家公安委員会であることから、道路交通法の審議は私、山岸一生が所属する「内閣委員会」で行われます。

 電動キックボードのルール変更にあたっては、私、山岸一生が所属する衆議院内閣委員会で審議のうえ、法案を可決しました。

 道路交通法の改正の成立に関わった衆議院議員として、そして、衆議院内閣総理大臣の中でも特に重点的に質問を行った衆議院議員として、制度が安全に運用されるよう、見守っていく責任があると考えています。

 本記事では、改正道路交通法の法案審議の議事録から、問題点をいくつかおさらいしておきたいと思います。

 昨年、2022年4月15日、衆議院の内閣委員会で、道路交通法の改正を審議した際の議事録を参照していきたいと思います。

(なお、読みやすくするために、議事録に適宜改行、表記の変更などを行っています。変更していない議事録をご覧になりたい方は衆議院のウェブサイトをご参照ください。)

衆議院内閣委員会での道路交通法の改正審議(2022年4月15日)

衆議院内閣委員会の道路交通法改正審議での山岸一生の質問・前半

○山岸委員

 まず電動キックボードの問題です。

 キックボードが実態として増えているからという現状追認ではなくて、これから道路空間をどういうふうに生かしていくのか、使っていくのかという前向きな議論が必要かなと思っているところなんですが、今回の法案は事実上現状追認というところにとどまるのかな、こういう印象を持っております。

 まず、そもそものキックボードをめぐる経緯からちょっと確認をしていきたいと思うんです。

 経産省(経済産業省)、教えてほしいと思います。

 国として電動キックボードをしっかり位置づけていこうという議論が始まったのは、2019年からと承知をしています。

 2019年12月2日、経産省が、多様なモビリティ普及推進会議、この場で、電動キックボードというものを例に挙げて、今後、シニア層を中心とした交通安全と生活に必要な移動手段の確保を両立するためには、こういう多様なモビリティーが役に立つ、あるいは、多様なモビリティーというものは、高齢者等が日常生活の中で移動を行う際に役立つというふうなことが書いてあるわけですけれども、経産省、お聞きします。

 電動キックボードを推進していく当初の大きな目的として、高齢者の移動手段の確保ということがあったということはお間違いございませんか。

○経済産業省参考人

 お答え申し上げます。

 経産省におきましては、2019年の多様なモビリティ普及推進会議、この中で、4種類のモビリティー、すなわち、小型電動モビリティー、電動アシスト自転車、電動車椅子、そして電動キックボード、この4点のモビリティーを中心に、今後の普及に向けた課題と対応について議論した、こういうことでございます。

 そして、この会議の取りまとめにおいては二点、一点目でございますが、シニア層を中心とした交通の安全と生活に必要な移動手段の確保を両立するため、多様なモビリティーにより多様な選択肢を用意していくことが有効であると考えられる、そして二点目、多様なモビリティーは、シニア層に限らず幅広い世代のニーズにも応え得るものであり、渋滞等の社会課題解決、新ビジネスの創出、地域の活性化といった観点からも期待される分野であることといった点を指摘してございます。

 こうした点を踏まえまして、関係省庁において、まず、ルール整備の必要が認められた電動キックボードについて関連制度の検討がなされてきた、かように承知してございます。

○山岸委員

 1、シニアというのがあって、2、それ以外にも役立つ、こういうことでスタートした議論なんだけれども、じゃ、実際どうなっているんだろうかということなんでございます。

 キックボードの利用は今進んでおりますけれども、経産省、様々実証実験等も行われていますけれども、そうした中でのシニア層の利用割合、利用実態というものを把握されていますか。

○経済産業省参考人

 お答え申し上げます。

 電動キックボードの実証実験、これは、産業競争力強化法に基づき、新事業活動計画の認定を受けた事業者が行っているものでございますが、これらの事業者が加盟するマイクロモビリティ推進協議会によりますと、昨年の4月の23日から10月末までの実証実験内での電動キックボード利用者のうち、60代以上の利用者、これは全体の約1.2%であった、こういうことでございます。

○山岸委員

 1.2%。高齢者はどこに行っちゃったのかなと。

 政策を進める一つのきっかけとしていろいろなことを考えていくというのは分かるんですけれども、やはり余りに実態と違うことを最初にかけ声としてかけてしまうと、制度にいろいろな無理が出てくるんじゃないかなということを私は懸念をいたします。

 今回に関しては、いわば警察が帳尻合わせで電動キックボードをめぐる様々な制度をつくっているということなんだろうと思います。

衆議院内閣委員会の道路交通法改正審議での山岸一生の質問の狙い

 私、山岸一生が衆議院内閣委員会でまずお聞きしたのは、「誰の、何のための新制度なのか」ということです。

 電動キックボードの議論が始まった時点では、経済産業省を中心に「地方のシニア層の移動のため」という大義名分を掲げていた、ということを明らかにしました。

 でも、ふたを開けてみたら実態が全く異なっていたのは、みなさんご覧の通りです。

 実際にはほとんどが「都市部の若者や観光客の移動のため」ですよね。

 政策を通すために、耳障りの良いことから入るというのは、よくある話なのですが、やはり全然実態と違うところから始めてしまうと、制度がおかしなものになってしまう、そのリスクがあると思います。

 くぎを刺したうえで、本格的な議論に入りました。

衆議院内閣委員会の道路交通法改正審議での山岸一生の質問・後半

○山岸委員

 具体的に議論していきたいというふうに思うんですが、この法案を一個一個見ていきますと、本当に現場でちゃんと機能するのかなというふうに思う場面がございます。

 例えば運転免許に関してでございます。

 これは原付バイクと同様に免許制度とすることも当然あり得たわけですけれども、今回、対象にしていないわけです。

 警察庁、お伺いいたします。今回、免許を必要としないと判断した根拠を教えてください。

○警察庁参考人

 お答えいたします。

 特定小型原動機付自転車は、その大きさ、性能上の最高速度等が自転車と同程度であることから、今回の改正案では、自転車と同様の交通ルールを定めるとともに、運転免許を要しないこととし、ヘルメットの着用についても、自転車と同様に、努力義務を課すことといたしております。

 その一方で、特定小型原動機付自転車は、自転車と異なり自走する乗り物であることから、原付免許を受けることができる者が16歳以上に限定されていることも踏まえまして、16歳未満の者については運転を禁止することといたしております。

○山岸委員

 自転車と同じだからというのは、「免許が要らないものだから免許が要らないんです」というトートロジーになってしまっていますので、私は、そのように判断をした根拠をお伺いしていきたいなと思います。

 根拠があるのかなということで、免許のあるなしで安全性がどう違うのかということを警察庁はお調べになっておりますよね。

 お手元、資料一でお配りしていますけれども、令和3年(2021年)12月、警察庁の多様な交通主体の交通ルールなどの在り方に関する有識者検討会の報告書の中で、実証実験で警察庁はいろいろな項目をお調べになったうえで、一部の項目を除き、運転者の運転行動に全体的に大きな差は無いと言うことができる、こう分析されていますけれども、私、率直に見て、この評価に疑問がございます。

 「一部の項目を除き差は無い」と書いてあるけれども、これは逆じゃないでしょうか。

 ずらっと見ていただければ分かるんですが、15項目のうち10項目で、免許のあるなしによって二倍以上の開きがございます。

 これはむしろ「大半の項目で大きな差がある」と評価するのが素直な読み方だと思うんですけれども、警察庁、この分析の妥当性、いかがでございましょうか。

○警察庁参考人

 お答えいたします。

 お尋ねの走行実験につきましては、運転免許の保有者それから非保有者を被験者として、それぞれ電動キックボードを運転して制限時間内にコースを走行していただきまして、その際の交通違反について採点をいたしたものでございます。

 その結果といたしまして、運転免許の保有者と非保有者とを比較すると、行われた違反行為の類型、この類型につきましては差異がなかったことなどを踏まえまして、報告書においては「一部の項目を除き、運転者の運転行為に全体的には大きな差はない」そういった評価になったものというふうに承知しております。

 また、委員ご指摘のとおり、非保有者の方が違反回数が多くなっているようになっておりますけれども、これは、走行実験の実施方法として、制限時間内でコースを何周するかは各自に任せていたということでございまして、同じ方が複数のところを違反したというようなこともあったというふうに聞いておりまして、単純には比較できないのかなというふうに考えております。

○山岸委員

 要するに今のお話は、つまり、免許のあるなしで違反の程度に差はあるけれども、違反しやすい場所は同じなので、免許があってもなくても余り変わりはない、そういうご結論なので、ちょっとやはり分かりにくいなというのが正直な印象です。

 当初から免許無しでの解禁ありきというところの中で話が進んでいるんだとすれば、やはり、それは政策の立案の進め方として、私はもっと、エビデンスといいますか、そういうものを重視をしていくということが必要なんじゃないのかなと。これは指摘をするにとどめたいというふうに思います。

 「データに基づく政策を」と言われて久しいですが、やはり実態は「データを都合よく読み取って、結論に当てはめている」という側面があると思います。

 皆さんはどのように感じましたか?

 続けて、電動キックボードの速度について尋ねました。

○山岸委員

 今回の規制の中でちょっと分かりにくいところ、先ほどほかの委員からも質問がありましたが、(走行時速)20キロ、6キロの二つのモードでございます。

 車道で20キロ、歩道で6キロの二つのモードをつくって、どちらも走れるようにすると。

 一昨日、事業者の皆さんの御協力で私も乗ってまいりましたけれども、乗って、ますますこの基準、実は分からなくなってしまったなと。

 6キロ、結構ふらつきました。

 逆に、15キロは安定していました。

 事業者の方に聞いたら、これは20キロになったらもっと安定しますよ、こういう話でございました。

 つまり、元々この電動キックボードはその程度の速度を想定して設計されている。

 だったら、端的に、車道を原付と同じスピードで走るというふうにした方がシンプルなんじゃないかなと思うんだけれども、さっき申し上げたように、高齢者の「ラストワンマイル」の移動を守るというところからそもそも始まっているからなのかもしれませんけれども、「歩道で6キロ」というこのカテゴリーが入ることになったわけです。

 改めて、警察庁、お聞きしますが、この20キロと6キロという二つのモードを設けた根拠を教えてください。

○警察庁参考人

 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたとおり、今回の改正案では、電動キックボードのうち性能上の最高速度と大きさが自転車と同程度のものを切り出して、特定小型原動機付自転車というふうにいたしております。

 自転車につきまして、様々な形態の通行空間における実勢速度を調査いたしましたところ、時速20キロメートル程度であったということを踏まえまして、今回、特定小型原動機付自転車の性能上の最高速度の基準を時速20キロメートルというふうにしたいというふうに検討を進めているところでございます。

 また、現行の道路交通法では、原動機を用いて自走するものでございましても、最高速度が時速6キロメートル以下であるなどの基準を満たす身体障害者用の電動車椅子につきましては歩道を通行することができることとされていることを踏まえまして、この特定小型原動機付自転車、原則は車道通行ということでございますけれども、性能上の最高速度がこの電動車椅子と同様に時速6キロメートル以下であるなどの要件を満たすものにつきましては、例外的に歩道などを通行することができるというふうにしているものでございます。

○山岸委員

 だから、それが交通の実態に合っているのかなということなんですが、20キロモード、例えば幅4メーターの生活道路でも車道(と歩道の区別の無い道路)であれば20キロということになる。

 一方、大きな車道、幹線道路に行けば、電動キックボード、ほかの軽車両、原付30キロ、あるいはスポーツ型の自転車なんかはもっと早いこともありますけれども、どんどん追い越していくということも頻繁に起きるんだろうと思います。

 幹線道路での車道で20キロというのは、かえって危険になることはありませんか。車道における整理はどう考えていますか。

○警察庁参考人

 お答えいたします。

 改正案では、特定小型原動機付自転車につきましては、自転車と同様の交通ルールを定めるということで、車道のほか自転車道を通行することができることとしているほか、普通自転車専用通行帯を通行することができるというふうにいたしております。

 また、車道を通行する際には、自転車と同様に、車道の左側端に寄って通行しなければならないということといたしまして、こういった措置によりまして自動車などと通行空間の分離を図りたいというふうに考えております。

○山岸委員

 一番左端にキックボードがあって、その外側に原付があって、ドライバーからしたら更にその外側を抜いていくという形になって、非常に実態的にどうなるのかなと。

 これは、しっかり運用を見ながら、不断の見直しをお願いしたいなと思います。

 現在、私、山岸一生が衆議院内閣委員会での質疑でただしたように、まさに、電動キックボードと自転車との衝突事故が、起こってしまっています。

 速度が区々なモビリティーの共存は、簡単ではないことがよくわかります。

 特に、電動キックボードには二つの速度モードがあり、その挙動はさらに予測しづらいものになっています。

○山岸委員

 20キロモードはともかくとして、更に危ないんじゃないかなと思うのは、6キロの歩道モードでございます。

 安定性が低いとさっき申し上げました。

 同時に、全く音が出ない。

 クラクションはあるんですけれども、これは原付並みのビビーという音がするものですね。

 これは、歩道を歩いている、特に視覚障害をお持ちの方にとっては非常に不安をあおるものではないかなと思います。

 後ろからふらふらと無音でやってきて、チリンチリンじゃなくて、いきなりビビーっと音がされるというのは、なかなか、ちょっと現実的には、危ないというか、不安ではないかなと思います。

 これは、今回、ルールはこういうことで理解をいたしますけれども、例えば、今後、官民協議会の議論の中で、歩道においてはできる限り手押しを推奨する、そういった運用は可能じゃないでしょうか。

 ルールはこうなんだけれども、できれば、狭い場所、人が多い歩道では下車して押してください、こういうふうな誘導の仕方もあり得るんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

○警察庁参考人

 お答えいたします。

 今回の改正案では、特例特定小型原動機付自転車につきましては、歩道を通行する際には、歩行者の通行を妨げることとなるときには一時停止をしなければならないなどの義務を課すことといたしております。

 今委員からも御指摘ありましたように、販売やシェアリングの事業者と関係省庁で組織した官民の協議会におきまして実効的な交通安全教育の在り方を検討することといたしておりますので、歩道での安全な通行方法も含めまして、事業者と連携して交通ルール等の周知に努めてまいりたいというふうに思っております。

○山岸委員

 この点も是非、具体的な使われ方を見て見直しをお願いしたい。

 その意味でも、官民協議会には現在事業者側しか入っておりませんけれども、是非、歩行者、ドライバー、それぞれの意見を聞く機会というものをしっかり持ってもらいたい。

 単にヒアリングしますということよりも、しっかりと位置づけてほしいということを、これは要望にとどめたいというふうに思います。

 やはりいろいろと、電動キックボードをめぐる今回の法改正は、筋がよくないといいますか、かなり警察としては努力をされて何とか制度をつくったんだろうなという思いがいたします。

 まず、やはりそもそもの出発点が、経産省はどういう思惑だったかは今回深掘りしませんけれども、高齢者というところを入口にして、しかし、実際にはインバウンド向けの規制緩和であるというところを警察庁が何とか制度をつくっているというふうな、こういう印象がいたします。

 その結果、歩行者の安全やドライバーへの配慮というものがなかなか行き届いていない。

 やはり、何のための、何から誰を守るための制度か、規制かということをよく考えないと、ちぐはぐな制度になってしまうんだろうと。

電動キックボードについて、山岸一生の考え

 ここまでお読みいただいていかがでしたか。

 国会の委員会での法案審議は、淡々と進んでいるように見えるとは思いますが、そこで法案の背景や、政府の考えを明らかにさせることにより、法律ができた後の運用で歯止めを効かせたり、勝手に解釈されたりしないようにしていく、大きな役割があります。

 これは政府の出す法案をチェックするという野党の「行政監視」という機能と同時に、法案を、そして実際に法律ができた後の運用をより良くしていく、という「政府・与党」と「野党」の共同作業です。

 先日も綴ったように「立憲民主党・野党は何でも反対している」という誤ったレッテルを貼られてしまうことがありますが、国会質疑は、法案を、そして実際に法律ができた後の運用をより良くしていく、という「政府・与党」と「野党」の共同作業です。

 そして今回の電動キックボードを巡る道路交通法の改正で市民、国民の皆さんに安全に乗り物を利用していただくための制度設計をする、ということには政党や党派に関係なく協力してできるテーマです。

 「法律を通したら、終わり」ではありません。

 その後の運用が極めて大事です。

 このキックボードについては、官民協議会という組織があります。

 ここで、さらなる安全性確保のためにどのような議論がされていくのか、引き続き、調べていきたいと思います。

 ぜひ皆さんのご意見をお寄せください。

 立憲民主党はあなたです。

 私、山岸一生も、この秋の臨時国会に向けて、さらに調査を深めていきます。

 それでは、東京都練馬区西部、衆議院東京9区選出の立憲民主党の衆議院議員、山岸一生でした。

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